陶製人頭禽形把手附瓶
陶製人頭禽形把手附瓶
とうせいじんとうきんけいはしゅつきへい


鳥の胴体に人間の女性の頭がついた形をしており、頭頂部に注口が、背面に把手がついています。これはギリシア陶器の中で「アスコス」とよばれる型式の容器で、内容物はワインや油であったと考えられます。当時のワインや油は大きな甕(かめ)で貯蔵されていましたが、必要量をアスコスに移し入れておくことで、杯やランプへ容易に注ぐことができました。実在または架空の動物を模した形状のアスコスは、イタリア半島中部のエトルリアと呼ばれる地域で、ギリシアの影響を受けて紀元前4世紀頃に盛んに製作されました。
ところで、この鳥の胴体と人間の女性の頭を持つものの正体は「セイレーン」です。セイレーンに関しては、美しい歌声で船乗りを惑わせて海に引きずり込む魔物という、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』中のエピソードが有名です。しかし、実は『オデュッセイア』には、セイレーンがどのような姿形をしているのかという具体的な言及はありません。そのためもあってか、芸術分野におけるセイレーンの表現には時とともに変化がみられ、古い時代には本品のように人頭鳥身だったものが、中世以降は人間の女性の上半身に魚の下半身を持つ妖艶な姿で描かれることが多くなります。某有名カフェのロゴにも用いられている通り、現代の我々が思い浮かべるのも、人魚のような姿のセイレーンではないでしょうか。
イタリア 紀元前4~前3世紀
高21.9 cm 長21.6 cm 土製
高21.9 cm 長21.6 cm 土製
資料番号:40-20

