天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術ガラス小玉鋳型(がらすこだまいがた)

奈良県天理市 布留遺跡杣之内(樋ノ下・ドウドウ)地区出土
古墳時代 5~6世紀
手前の鋳型の幅 4.0 cm 土製鋳型
資料番号:

展示中 1-0

表面にまるで蜂の巣のように円形の穴が多数開いた土製品(どせいひん)です。その断面をみると丸い穴の底には裏側に貫通する針で突き刺したような孔が開けられています。どうも、この土製品の丸い穴の底にはピンのようなものが立てられていたようです。
実は、これはビーズ玉のようなガラス製の小玉(こだま)を作るときに用いられた鋳型(いがた)なのです。一見すると、たこ焼き器のようにもみえるので「たこ焼き型鋳型」とも呼ばれています。
その製作方法は、穴の中央にピンを立て、そこにガラス片を砕いて入れ、鋳型を熱します。そうすると、まさにたこ焼きを焼くように、ガラスが溶けて丸いガラスの小玉ができます。そして、ピンを外すと中央に糸を通すための孔の開いたガラス小玉が完成します。
本例は破片なのでその全容はわかりませんが、福岡県の西新町(にしじんまち)遺跡の出土例などから、一度に200個以上のガラス玉がつくれることが明らかにされています。それまでの金属棒などに溶けたガラスを巻きつけたり、ガラスの管を輪切りにして一つずつ小玉をつくっていく方法から考えると、技術に大きな革新のあったことがわかります。
この製作技法は朝鮮半島の百済(くだら)の地域から4~5世紀に我が国にもたらされたものと考えられています。本資料は布留遺跡にかつて百済系の工人がいたことを示す資料として重要です。