どのような形態や構造であれ、それ自体には本来の意味があり、機能が備わっていたはずです。ただ時代がかけ離れて、理解しきれていないためにユニークと感じるのです。
本例は表面が黒褐色の土器で、光沢は今も残っています。器形は特異です。2個の鳥形をした壺を連結したもので、中空の連結部からさらに少し湾曲した棒状の吸口が出ています。いわばストローです。鳥形壺は、球形胴部の一方に素環状の尾部が、他方には円筒形の頸部がつきます。頭部には突出した鼻、口、耳、そして小円板を貼り付けた両目を表しています。頭頂部には刻文があり、冠を表しているのかもしれません。こうした面貌から判断すると、迦陵頻伽(かりょうびんが)のような人面鳥身の神を表したものではないでしょうか。
こうした連壺は西アジアに多く見られます。内部も小さな孔でつながっていて、容器としては一体化しています。壺を1つの社会・部族・家族と考えると、異なる2つの社会、部族、あるいは家族がなんらかの契約(結婚など)を結ぶ時に、2つを1つにした容器に液体を入れ、そこから注がれる液体を飲むことで契約成立を象徴させていたのでしょうか。
契約には国と国を結ぶような盟約もありますが、そのような儀礼にはこの容器はどうもそぐわないでしょう。むしろ男女を結ぶ婚礼に合っているように思えます。若いカップルが喫茶店で1つの飲み物を分け合うことにも通じます。
そう思うとこの資料にも、親近感を覚えます。意外と古代の人たちも同じようなことを考えていたのかもしれません。