天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術唐三彩塤(とうさんさいけん)

唐三彩塤

唐三彩塤

唐三彩塤

唐三彩塤

中国 唐 8世紀
高3.8cm 三彩陶
資料番号:095-8

展示中 3-16

中国・唐時代を代表する焼き物といえば、多くの人が唐三彩を想起するのではないでしょうか。唐三彩の華やかな姿は、まさに国際帝国として絢爛な文化を築いた大唐帝国を体現するものといえるでしょう。一般にイメージされる唐三彩といえば、色鮮やかな人物俑や動物俑、鎮墓獣、そして流麗な姿をした壺や瓶などの器物でしょう。しかし、実はその他にも小型の玩具なども作られていました。
この作品は、「塤(けん)」と呼ばれる中空で球状の土笛で、上部に吹き口をあけ、両頬部分に指孔が二つ穿たれたものです。全体はほぼ球形を呈しています。写真からもわかるように、ユニークかつ魅力的な表情を示す顔が象られています。おそらく、胡人や猿などの頭部を誇張して表現したものと考えられます。口をぐっと力を込めたようにへの字に曲げており、迫力と面白みを感じさせます。玩具の楽器と考えられますが、特徴的な表現を示すものでもあるため、単なる玩具であったかについては判断が難しいところがあります。説話的、寓話的な意味合いがあったのかもしれません。
なお、この作品に近似する例が中国・河南省の黄冶窯から出土しています。唐三彩を生産した窯はいくつか知られていますが、その中でも代表的な生産地として知られているのが黄冶窯です。大きさや表現、技術的な特徴などがよく一致するため、この作品も黄冶窯やその周辺で焼成された作品と考えるのが妥当でしょう。
また、当館には完形品ではありませんが入手経緯の異なる同種の三彩塤がもう一品収蔵されています。長い年月を経て、遠い異国の地で偶然兄弟が再会したようなものであり奇縁といえるのではないでしょうか。