天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術紅陶加彩騎馬官人俑(こうとうかさいきばかんじんよう)

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中国 唐 8世紀
高28.3cm 加彩陶器
資料番号:中1155

展示中 3-16

今まさに男性が馬に乗ろうとしている瞬間の姿を見事に表現した騎馬人物俑です。中国・唐時代の作品で、唐王朝が全盛期を迎えていた8世紀頃のものと考えられます。その写実的で動的な造形表現には卓抜したものがあり、盛唐時代の優れた芸術性を示しているといえるでしょう。のびやかで明るく長閑な雰囲気を持ち、我々に唐時代の理想像を感じさせてくれます。現在は白色を呈していますが、かつては赤みのある胎土に白化粧を施し、その上に岩絵具を用いた鮮やかな彩色が施されていました。現在はほとんどが剥落してしまっていますが、よく見るとわずかに墨線などが残っていることがわかります。
この人物の装いは典型的な唐時代の官吏の姿を表現したものです。頭には幞頭(ぼくとう)を被り、袖の長い袍衫(ほうさん)を身に纏っています。足には靴を履いていることもわかります。絵画作品などからも当時の姿を知ることができますが、こういった写実的な立体造形物を見てみることでより深く理解することができるのです。この作品で特に興味深いのは、腰に2つの丸いポシェット状の袋をぶら下げていることでしょう。この袋は『旧唐書』などの史書に見られる「鞶嚢(はんのう)」と呼ばれるものと考えられ、身につけることで官位の上下を一目瞭然とする役割を持った装いでした。この作品は唐令にあった衣服規定を示していることでよく知られており、歴史資料としても高い価値を持っているのです。