天理参考館
TENRI SANKOKAN MUSEUM

参考館セレクション

世界の考古美術白胎加彩胡人俑(はくたいかさいこじんよう)

中国 唐時代 7~8世紀
高さ(左)25.3cm、(右)23.1cm
白胎加彩
資料番号:中1165、中1166

展示中 1-0

シルクロードを通じて行われた東西交流において、商業活動に優れ非常に重要な役割をはたした人々としてソグド人と呼ばれる民族が知られています。この2体の俑は、シルクロードを経て遙か西方より中国に来訪したソグド商人(胡商)の姿を表していると考えられます。その容貌はいわゆる漢民族とは異なっていて、彫りの深い顔立ちに豊かな顎髭をたくわえており、見るものにエキゾチックな雰囲気を感じさせます。また、頭にはフェルト製の特徴的な尖頂帽をかぶり、膝まで届く開襟の胡服を身につけ、足には皮製のブーツを履いています。手には胡瓶(こへい)と呼ばれる西方風の水瓶を持ち、いかにも異国情緒あふれる装いとなっています。背には大きく重そうな荷物を負い、一体はうつむきがちに、もう一体は首をかしげるように天を仰いでいます。その表情からはやや疲れが感じられ、長旅を終えてようやく中国に至った胡商の姿を見事に表現している俑といえるでしょう。
『唐会要(とうかいよう)』という書物には、サマルカンド(康国)に住むソグド人の容貌の特徴として「目が深く鼻が高い。髭が多い」と記載されています。これらの俑の顔立ちとよく一致することがわかります。また、同書には「子どもが生まれると、必ず口に蜜をなめさせ、手には膠(にかわ)を握らせる。その子どもが成長すると、口からは甘い言葉をはき、手には銭がつくように願うためである。その習俗は商売に長け、僅かの利益を争う」とも述べられており、当時ソグド人が商業民族として活躍していた様子がよくわかります。
これらの俑の類例は比較的多く知られており、唐時代に好まれた副葬品の一つであったようです。墳墓に副葬されたこのような胡人俑には、彼ら西方の商人がもたらす珍しい品々を死後の世界でも楽しみたいと思う墓主の願いが込められていたのでしょう。