第151回展 「蹴鞠 kemari」


  蹴鞠(けまり)は日本におけるサッカーのルーツと広い意味で捉えらえられています。Jリーグ開幕前に国立競技場で蹴鞠が披露されたのをご覧になった方も多いでないでしょうか。
 蹴鞠は、中国から仏教とほぼ時期を同じくして伝えられています。大化の改新へとつながる中大兄皇子と中臣鎌足の出会いが蹴鞠の場だったことは有名です。その後の長い年月にわたる歩のなか、日本の文化や伝統によって独自のスタイルを確立し、様式としてはアジア二例を見ない足を使った遊戯に発達します。中国で軍事教練の一つだったものが、日本では勝敗を競うのではなく、鞠を地面に落とさないようにお互いに多くの回数を蹴り続ける遊戯へと変化します。
 優雅に蹴り渡してているように見えて、そのためには厳しい鍛錬が必要とされます。日々の訓練によってのみ、鞠の変化に対して瞬間的、無意識的に足が反応して動くようになる「足魂」が生まれるのだと13世紀の貴族の秘伝書に綴られています。頭上に吊した桶にコントロールした鞠を百発百中全て正確に蹴り入れることができるようになったら、外で実際に蹴り合ってもよろしいなど、興味深い記述も見ることができます。
 その厳しい訓練の伝統を受け継いで、現在の「足魂」を伝える日本のサッカー。今回の展示では、蹴鞠とサッカーの比較も試みつつ、装束、用具、ルールなど、蹴鞠の様式を伝える資料をご覧いただきます。また、蹴鞠関連文書を多数所蔵する天理図書館の協力を得て、その史料の一部を複写でご紹介いたします。

 

桃紫片身替唐花菱水干

桃紫片身替唐花菱水干

 

◆会期:2014(平成26)年2月15日(土)~3月29日(土)
◆開館時間:午前9時30分~午後5時30分
 ※入場は午後5時まで
◆休館日:毎週日曜日
◆入館料:無料
◆会場:東京天理ビル9階 天理ギャラリー
◆後援:読売新聞社
◆協力:蹴鞠保存会、白峯神宮(以上 京都)、談山神社(奈良)、平野神社(滋賀)、天理大学附属天理図書館、天理大学サッカー部

 

チラシ

 

◆列品解説(ギャラリートーク)
 日時:2014(平成26)年2月15日(土) 午後1時30分から
 担当:幡鎌 真理当館学芸員

◆蹴鞠装束着付実演と鞠についての講演(蹴鞠保存会)
 日時:2014(平成26)年3月8日(土) 午後2時から

 

151_book展示図録

サイズ/B5版、カラー29頁、モノクロ1頁
頒 価/700円

展示詳細

 蹴鞠は鹿革の鞠を右足のみを使って8人で蹴り合います。手や腕以外を使って球を操作するという点で英訳すればフットボールになります。蹴る技術を高め、仲間と連携して鞠を地面に落とさないように回数を多く、それに加えて優雅に美しく蹴り続けることを目指します。
 しかしその美しい振舞いのかげには、厳しい鍛錬が必要とされます。鎌倉時代の蹴鞠の秘伝書に「心にふかく約束し、功入(こういる)にしたかひて、足たましゐ出来て、心を待たす、思いにしたかはず、鞠に付て足自然に振舞也」という一節があります。自分で心に誓って反復練習を怠らなければ、やがて足魂(あしだましい)ができ、頭で考えなくても足が勝手に動いて鞠をとらえるようになつのだと説いています。この時代に既に運動の反射化を「足魂」という言葉で的確に表現していることは見事と言うしかありません。
 本展は昭和40年代に天理大学の図書館である天理図書館と博物館である天理参考館とに分けて収蔵することとなった蹴鞠関係資料およそ700点の中から、天理参考館蔵品260点余のうち76点を45年ぶりに東京で紹介するものです。数年来、天理図書館の協力を得て文書の調査を進め、本展に反映することができました。
 また、蹴鞠保存会をはじめ多くの機関のご指導ご支援を賜りました。深く感謝申し上げる次第です。6月にワールドカップが開催される今年、日本の足魂を伝える蹴鞠の世界をお楽しみ下さい。

 

出品リスト

 

No 資料名 法量cm 年代
1. 鞠 外周58.0cm
2. 金箔鞠 外周58.0cm
3. 金箔鞠 外周58.0cm
4. 銀箔鞠 外周59.0cm
5. 金箔鞠 外周52.5cm
6. 白鞠 外周54.0cm
7. 白鞠 外周56.0cm
8. 燻鞠 外周57.5cm
9. 分銅鞠 外周59.0cm 平成
10. 鞠台(二丸用) 長35.5cm
11. 鞠台(二丸用) 長39.0cm
12. 鞠台(一丸用) 長20.0cm
13. 鞠台(鞠箱の蓋) 高6.5cm
14. 鞠挟・蝋色桜文金蒔絵紫組緒 径17.5cm
15. 鞠挟 36.3cm
16. 製作途中の鞠 径25.0cm 平成
17. 製作途中の分銅鞠 径20.0cm 平成
18. 鹿革 31.5×30.8cm 平成
19. 鹿革 31.5×32.5cm 平成
20. 腰革 長50.0cm 平成
21. 腰革 長39.0cm 平成
22. 鞠水干・紅上 裄丈107.0cm 文化7年
23. 鞠水干・香色地龍瞻文金紗上 裄丈118.0cm 大正4年
24. 鞠水干・紫下藤松葉散金紗上 裄丈96.0cm 明治22年
25. 鞠水干・桃色紫片身替唐花菱亀甲丸金紗上 裄丈115.0cm 昭和11年
26. 鞠水干・各種金紗無紋継合上 裄丈110.0cm 大正5年
27. 鞠水干・紫タン杜若金紗上 裄丈115.0cm 大正4年
28. 萌黄葛袴 丈123.0cm 明治43年
29. 白打貫葛袴 丈123.0cm 大正7年
30. 萌黄朽葉片身替葛袴 丈125.0cm 明治時代
31. 紅白片身替摺箔葛袴 丈125.0cm 明治23年
32. 朽葉萌黄各替葛袴 丈123.0cm 大正4年
33. 萌黄白片身替葛袴 丈123.0cm 大正10年
34. 萌黄黄朽葉片身替葛袴 丈125.0cm 昭和11年
35. 紫組懸緒立烏帽子 高17.5cm
36. 烏帽子箱 高18.0cm
37. 紫組懸緒立烏帽子 高16.0cm
38. 紺組懸緒立烏帽子 高17.0cm 大正15年
39 立烏帽子 高16.0cm 万延2年
40. 冠 高15.0cm 慶応2年
41. 馬尾懸緒 長224.5cm 江戸末期
42. 紺組懸緒 長381.5cm 江戸末期
43. 薄色組懸緒 長334.0cm 江戸末期
44. 紫組懸緒 長325.4cm 江戸末期
45. 白茶組懸緒 長313.5cm 江戸末期
46. 有文燻革韈鴨沓 長23.0cm
47. 無文燻革韈鴨沓 長22.5cm
48. 無文燻革韈鴨沓 長22.5cm
49. 無文燻革韈鴨沓 長29.0cm 明治41年
50. 鴨沓 かもぐつ 長24.5cm
51. 鴨沓 かもぐつ 長22.5cm
52. 鴨沓 かもぐつ 長30.0cm 大正2年
53. 浅沓 長25.0cm
54. 猫掻 27.5cm×35.0cm
55. 帖紙:表香裏薄紅 13.5cm×25.3cm
56. 帖紙:表白裏蘇芳 13.7cm×26.0cm
57. 有文藍白地露革 長16.6cm
58. 三追龍膽文錦露革 長14.5cm
59. 三追龍膽文錦露革 長11.3cm
60. 鞠扇・蘇芳十骨桜樹文 長32.0cm
61. 鞠扇・蘇芳十骨桜樹文 長32.0cm
62. 鞠扇・煮黒十骨桜樹文 長32.0cm
63. 年中行事絵巻(写) 縦30.0cm 安政頃
64. 銅版画 新鐫三都自慢競 9.4×14.8cm 江戸後期
65. 蹴鞠図引札刷見本 36.2×24.8cm 明治期
66. 製作用具一式
   物差 長36.3cm 明治42年
   鯨尺 長30.3cm 大正8年
   周囲計(40目盛) 長28.8cm
   巻尺 径3.5cm
   鉋丁 全長17.5cm 昭和9年
   鑿 長14.0cm
   文廻し 長24.8cm
   矢金一式 長11.5cm
   矢金用差革 横29.0cm
   撞木金 全長33.1cm
   撞木金 全長32.3cm
   撞木金 全長29.0cm
   目打金(三つ目) 長11.0cm
   目打金(三つ目) 長13.28cm
   目打金(三つ目) 長9.5cm
   目打金(二つ目) 長9.4cm
   目打金(二つ目) 長12.3cm
   目差 全長14.8cm
   丸棒 長27.3cm
   羽子板 長23.7cm
   擦木 長32.0cm
   極め付木 縦34.0cm
   切り藁 長14.0cm
   漏斗 長18.0cm
   錐 全長26.4cm
   錐 全長26.6cm
   二本錐 全長12.3cm
   錐 全長12.0cm
   錐 全長11.7cm
   円錐型錐 全長16.4cm
   円錐形平棒 全長15.0cm
   やっとこ 長20.5cm
   やすり 全長33.0cm
   型紙 縦25.1cm
   布海苔 長29.0cm
67. カートワァイ〔ラオス〕 外周40.0cm 20世紀
68. カプドゥレン〔台湾〕 外周22.0cm 20世紀
69. 鞠〔中華民国〕 外周65.0cm 20世紀
70. 鞠〔中華民国〕 外周47.5cm 20世紀
71. 鞠〔中華民国〕 外周46.5cm 20世紀
72. 木球 外周18.0.cm 15~16世紀
73. 木球 外周17.5.cm 15~16世紀
74. サッカーボール 外周65.0cm 平成
75. ユニフォーム一式 着丈67.0cm 平成
76. ユニフォーム一式 着丈67.0cm 平成

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