創立90周年特別展「スポーツの歴史と文化」
【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため開幕を見合わせていましたが、会期を変更して6月10日(水)より開幕いたします】
当館は本年(2020年)創立90周年を迎えました。この記念すべき年に特別展「スポーツの歴史と文化」として、当館が収蔵する世界各地の考古資料や生活文化資料からスポーツに関連する資料を紹介いたします。
スポーツと言えば、現代はオリンピックに代表されるように、一定のルール下で新記録と勝利を競うグローバル化したスポーツが盛んになっていますが、一方で、特定の民族あるいは特定の地域に古くから伝わり、伝統に根ざした固有のスポーツも存在します。人類におけるスポーツは長い歴史を有し、その時々で民族グループの独特の文化を反映しています。
本展ではこうした「民族スポーツ」に注目し、一見して競技性がなくても容易に競技化することが可能なもの、狩猟や、宗教・儀礼で行われる身体活動、さらに遊技の範疇に属する行動様式もスポーツとみなし、関連する資料を展示いたします。
また、当館が収蔵する古今東西の資料展示に加え、国立民族学博物館、天理大学附属天理図書館、さらに天理と縁あるスポーツ団体・個人からも競技用具などの展示協力を得ることができました。スポーツの歴史と文化をさぐり、その背景にある豊かな精神世界を感じていただければ幸いです。
◆会期:2020年6月10日(水)~8月2日(日)
◆会場:3階企画展示室1・2
◆主催:天理大学附属天理参考館
◆後援:奈良県天理市、天理市教育委員会、公益財団法人奈良県体育協会、NHK奈良放送局、奈良テレビ放送、歴史街道推進協議会
◆協力:国立民族学博物館、日本スポーツ人類学会、蹴鞠保存会、天理大学、天理大学附属天理図書館
●ポスター
●「子どもといっしょにおうちで参考館を楽しもう!」プロジェクト
特別展 「スポーツの歴史と文化」子どもクイズ【その1】(ファイルサイズ535KB)
特別展 「スポーツの歴史と文化」子どもクイズ【その2】(ファイルサイズ579KB)
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第22回
「ギリシアの古代美術」
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関連イベント
※入館券が必要です
特別展記念講演会
第1回「民族スポーツの世界」
日時:2020年5月9日(土) 午後1時30分から午後3時
【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
講師:寒川 恒夫氏(早稲田大学名誉教授・静岡産業大学特任教授)
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
第2回「競技祭と文化・芸術」
日時:2020年7月4日(土) 午後1時30分から午後3時【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
講師:真田 久氏(筑波大学教授)
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
連続講座「民族スポーツ探訪!」
第1回「あなたは登れますか:スペイン・カタルーニャ州の『人間の塔』から」
日時:2020年4月23日(木) 午後1時30分から午後3時
【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
講師:岩瀬 裕子氏(日本スポーツ人類学会会員)
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
第2回「メキシコの文化と社会を映す民族スポーツの世界」
日時:2020年6月6日(土) 午後1時30分から午後3時【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
講師:小木曽 航平氏(広島大学准教授)
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
天理大学公開授業「天理スポーツ、競いと交流、貢献、その足跡と今後の展望」
第1回
第一部「ラグビーの競い、交流」
講師:近藤 雄二氏(天理大学非常勤講師)・小松 節夫氏(天理大学ラグビー部監督)
第二部「マールブルグとの交流、貢献」
講師:森本 智士氏(天理大学准教授)・梅谷 昭範(当館学芸員)
日時:2020年4月17日(金) 午後1時から午後3時45分
【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
第2回「柔道の競い、交流そして貢献」
日時:2020年5月2日(土) 午後1時30分から午後3時
【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
講師:細川 伸二氏(天理大学教授)・穴井 隆将氏(天理大学講師・柔道部監督)
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
トーク・サンコーカン(公開講演会)
日時:2020年5月23日(土) 午後1時30分から午後3時
【新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため中止】
講師:早坂 文吉(当館学芸員)
場所:研修室
定員:100名(当日先着順)
第278回「世界の球技いろいろ―どこで蹴りますか?―」
日時:2020年7月18日(土) 午後1時30分から午後3時
講師:幡鎌 真理(当館学芸員)
場所:2階ホール
定員:30名(当日先着順)
※新型コロナウィルス感染防止対策につき入場制限を行う場合があります。
ギャラリートーク(展示解説)
日時:2020年4月27日(月)・5月23日(土)・5月26日(火)・6月6日(土)・6月29日(月)・7月18日(土) 午後3時から【新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため中止】
場所:3階企画展示室
[展示の概要]
1. 何のために戦う、走る
スポーツの歴史や起源を辿ることは、さまざまな遊び・競技がある中で単純に語れることではなく、一筋縄にはいかないことである。しかし、古代より戦い走ることは人間にとって必要な身体活動であり、スポーツの始まりの姿であった。その目的は狩猟などの生業の上から、敵対する集団・人に対して、通過儀礼や神への捧げものとして、はたまた一定のルールを決めた遊戯から、と多様に存在する。
本章では現在行われているスポーツやオリンピック競技のルーツの一端を、主に考古資料や先住民をはじめとする伝統的な生活に求め、これらの身体活動に伴う道具を紹介する。
(1)くらしの中のスポーツ
人びとは太古の昔から外敵から身を守るために戦い、空腹を満たすために狩猟を行ってきた。現在の陸上競技にも通じる3つの基本である「走る」、「跳ぶ」、「投げる」という動作とともに、より確実に食料を獲るために、投石具、棍棒、ブーメラン、槍、弓矢などの道具を生み出した。こうした道具は野生の動物、魚介類を対象としたものに限らず、時として敵対する集団・人への戦闘の場面にも応用された。そして、これらの生業や戦争の間の余暇には各種道具を用いてその技を競い合い、娯楽や訓練としても楽しんだ。
(2)神と交わる聖なる時間
スポーツの起こりは一様ではないが、スポーツは神がみに捧げ、神と交わるものでもあった。狩猟・漁労民にとって獲物を得ることは命に関わる問題であり、生きるための手段であった。農耕民にとっては、作物が採れるか否かは人間たちの力ではどうすることもできない自然環境によって大きく左右された。こうした自然の力や、身のまわりに起こる不思議な現象から、人びとはそこに神の存在を意識した。獲物の獲得、豊作などの神からの恵みに感謝し、平穏な生活を願うための祈り、儀礼も古くから行われてきた。
古代オリンピックはギリシア人がゼウス神に4年に一度、競走、円盤投げ、やり投げなどの祭典競技を捧げたことから始まったとされる。本節では、世界各地のいわゆる「儀礼的スポーツ」に関する資料にスポットを当てる。
(3)見よ、勇者のしるし
今日のスポーツ競技大会では、優勝者もしくは上位入賞者に対して、メダル・トロフィー・盾など様ざまな記念品が授与される。記念品授与の歴史は古く、古代ギリシアではピューテイア大祭の勝者に月桂樹の冠が、オリンピュア大祭の勝者にはオリーブの冠が授与された。本節では現在の記念授与品と関連がある古代ギリシアの副葬品、そして先住民社会でのスポーツ競技の授与品を紹介する。
2. 楽しむ
スポーツ「sports」という言葉は古代ローマ人が使ったラテン語「deportare」にさかのぼる。元々の語義は“移動する”から“気晴らしをする”、そして“遊ぶ、楽しむ”へと転じた。
スポーツは優劣を競う以外に、時間を忘れ、我を忘れて夢中になり、神や自然と一体になって「フロー(flow)状態」になることもある。自然と触れ合い、人間同士のコミュニケーションをはかって「楽しむ」こともスポーツの非常に大きな要素である。世界各地で農耕が発展すると、季節毎の祝祭行事での踊りや、走る、飛ぶなどの民族伝承運動も盛んになり、単純な奪い合いのゲームから発展して最も親しまれたのがボールゲームであった。娯楽として遊びを含むスポーツは、日本の蹴鞠の例もあるように、格調高く花開いていくものもあった。
(1)飛べ、舞え、美しく
舞踊をもたない民族はいないといわれる。舞踊は、単に娯楽としてのみならず、異性を引きつけ男女を結びつけるものでもあった。また、神との交信を行う祭礼や年中行事の一環にも取り入れられた。そして、時代とともに芸術性も備えられ、身体運動の教育の手段としても用いられるようになった。日本の保健体育の授業では2012年からダンスが中学校で必修化されている。舞踊は近代スポーツである体操の各種競技、水泳の飛び込み、フィギュアスケートなどの競技へと発展していった。
そして、飛び、舞うものは何も人間そのものだけではない、本節では人間が操作して舞う中国の蹴羽根「ジェンズ」、中国コマ(ディアボロ)などもその範疇に入れて紹介する。
(2)球体の魅力と魔力
私たちはボールといえば球体で丸いものと認識している。日本語の「まり」も球体を意味する名詞「まろ」からの転化といわれている。一方で、ボールの中には、ラグビーボールのように決して完全な球体でないものも含まれていることに気づかされる。ラグビーやアメリカンフットボールに使用されるボールは、もともとは動物の膀胱を膨らませたものであり、その形が今に残されているともいわれている。このいびつな球体によって、予測できない不規則なバウンドが生まれ、その競技をより一層面白くさせているのである。またボールを太陽と月といった天体と結びつけた神話伝承が世界各地で残されており、古くからボールは人間にとって密接なものでもあったようだ。
ボールはかつて自然物をその素材とし作られていたが、19世紀後半以降、サッカー、バスケットボールなどの近代スポーツの登場によって、ボールの大きさや性能が規格化されていき、その素材も合成ゴムや人工皮革、特殊プラスチック等が使われるようになり大量生産されるようになった。
しかし、世界を見渡すと一口にボールといってもさまざまな形状、材質、構造が存在しており、土地ところの自然環境、民族グループの文化などが色濃く反映されている。また、ボールを用いて投げる、蹴る、つかむ、または道具を使って打つなど、多くのバリエーションをもつ球技(球戯)が存在する。
3.競う
遊戯娯楽における身体活動に加え、「競う」ということは、スポーツを定義づける要素として欠かせないものであろう。自分自身と、そして相手と競い、勝利することがスポーツの醍醐味であり、その真剣勝負の中に勇気と感動も生まれる。
それぞれの地域で行われていた伝統的なスポーツは19世紀半ばから国・地域を超えた競技会を開催する「国際化」や厳格なルールが制定され、勝敗が決められるようになる「競技化」が進んだ。今日では、オリンピック・パラリンピックを始めとするさまざまなスポーツ競技の国際競技大会が世界各地で開催されるようになった。
(1)「民族スポーツ」と「国際スポーツ」
ヨーロッパ近代(19世紀後半)に生み出されたサッカー、バスケットボール、テニスなどのスポーツは「近代スポーツ」と呼ばれる。これまで、それぞれの民族や地域における緩やかな決まり事で行われていたこれらのスポーツは、競技のルール、用具、施設が統一され、植民地政策とともに各国・各地域へと浸透して国際化し、「国際スポーツ」となっていった。
一方で、特定の民族あるいは特定の地域に古くから伝わり、伝統に根ざした固有の「民族スポーツ」は「近代スポーツ」の対極に位置しており、周縁化していった。しかしながら、それぞれ特定の民族グループが自己のエスニシティ(ethnicity:民族グループへの帰属意識、個人のアイデンティティが民族レベルで発現したもの)形成とその存在の主張を目指した「民族スポーツ」の大会も近年盛んに行われるようになっている。
(2)讃えよ、超人
当館の創設者である中山正善(1905-1967)は、自身がスポーツを愛好するだけでなく、国内外のスポーツの普及振興にも力を尽くした。また、天理の地において各スポーツ競技の施設をつくり、国外の一流選手を呼び寄せ、全国的な大会を開催するなどの活動を展開し、いつしか天理で行われるスポーツは「天理スポーツ」という固有名詞で呼び慣らされるようになった。本節ではこうした天理と縁のある団体および競技者から提供を受けた競技道具や記念品を中心にその活躍と業績を紹介し、研鑽する過程やスポーツに対する競技者の思いを提示する。
(3)天理スポーツの交流、貢献
創設者によって1950年代ごろから進められたスポーツ普及・振興活動は、現在にも継承されている。その中でも柔道における国際交流と貢献について、フランス、ドイツ・マールブルクと天理大学の連携を例に挙げ、パネルで紹介する。
※会期を短縮して開催するため、一部展示替えを行っています。ご了承ください。
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