特別展・企画展

第85回企画展 Osaka Metro開業1年「大阪市営交通114年の軌跡」


大阪市営電気鉄道開業時の1銭片道乗車券 明治36年 縦3.5cm

市電2階付電車絵葉書 明治40~41年 縦13.1cm

古くから“水の都”と呼ばれた大阪市において、明治36年、日本で初めて公営の電気軌道(路面電車)として大阪市電が開業しました。大阪市は民間企業ではなく自ら電鉄経営を行うことで計画的な都市整備を行うとともに、その収益を道路拡幅や橋梁新設・架け替えなど都市整備に活用する「市営主義」を推し進めたのです。その後、昭和2年に市営バス開業、昭和8年には地下鉄を開業し、戦時中は大きな被害も被りましたが、徐々に地下鉄の路線を延ばしました。

やがてモータリゼーションの進展に伴って昭和44年に市電を廃止し、翌45年の万国博覧会開催時には現在の形に近い地下鉄網が完成しました。

大阪市は行政改革の一環として、平成30年に大阪市交通局の事業を大阪市高速電気軌道(地下鉄・ニュートラム)と大阪シティバス(市営バス)に引き継ぎ、大都市の公営交通として初めて完全民営化が実現しました。

本展では、乗車券や路線案内図、鉄道部品などからその114年の歩みをたどり、市民の足としてだけではなく、大阪の街を形づくったと言える市営交通が与えた影響と意義について紹介します。

 

◆会期:2019年10月9日(水)~12月2日(月)
◆会場:当館3階企画展示室1・2
◆主催:天理大学附属天理参考館

◆後援:奈良県天理市、天理市教育委員会、大阪市高速電気軌道株式会社、大阪シティバス株式会社、共同通信社、歴史街道推進協議会

 

ちらし

出品リスト

 

関連イベント

※入館券が必要です

○記念講演会
「大阪市と市内交通機関市営主義―モンロー主義の成立と終焉―」

日時:2019年11月30日(土) 午後1時30分から午後3時
講師:三木 理史氏(奈良大学文学部教授)
場所:当館研修室
定員:100名(当日先着順)

 

○OBによるミニトーク
「大阪市交通局40年の想い出を語る」

日時:2019年11月2日(土) 午後1時30分から午後2時10分
講師:亀井 英胤氏(元大阪市営地下鉄難波駅 首席助役)
場所:当館研修室
定員:100名(当日先着順)

 

○トーク・サンコーカン(公開講演会)
第273回「資料でたどる大阪市営交通114年のあゆみ」

日時:2019年10月19日(土) 午後1時30分から午後3時
講師:乾 誠二(当館学芸員)
場所:当館研修室
定員:100名(当日先着順)

 

○ギャラリートーク(展示解説)
日時:2019年10月25日(金)・11月26日(火) いずれも午後1時30分から
場所:当館3階企画展示室

 

○鉄道模型走行実演と記念硬券キップの配布
特設の鉄道ジオラマに鉄道模型を走行させます。その後、本展特製記念硬券の配布と日付印字(出札係)の体験を行います。 日時:2019年10月16日(水)・10月27日(日)・11月2日(土)※午後のみ・11月13日(水)・11月23日(祝・土) 午前11時から・午後2時30分から(各約30分)
場所:当館3階ロビー

 


 

[展示の概要]

 

展示風景1

展示風景2

I 大阪市電のあゆみ

 

大阪市の交通事業は、明治36年9月12日、市電花園橋西詰~築港桟橋約5キロの開業により、その第一歩を踏み出した。その後、明治41年には2期線、大正5年には3期線が開業し、近代的な交通機関が大阪市内において本格的に活躍するようになった。
他の大都市と違い、当初から市直営で運営された大阪市では、市電の敷設に併せ道路の整備・拡幅や、橋梁の新設・掛け替えを行った。市電はインフラ整備に重要な役割を果たすとともに市電の収益を姿勢に還元することで町づくりの一役を担ったと言える。
第二次大戦中は大きな被害を被るものの、昭和23年頃には戦災路線全線の復旧を終え、車両も昭和25年には復旧した。その後、自動車の増加とバス輸送の伸び、地下鉄路線延伸によって利用者数が横ばい状態であった市電は、スピードの低下による輸送効率の悪化で経費が増大し次第に経営が苦しくなり始めた。
昭和35年に発生した大規模な交通マヒが契機となり、市電廃止の流れが決定的なものとなった。それ以降順次路線が廃止され、昭和44年3月31日守口線(阪急東口~守口車庫前)と九条高津線(玉船橋~今里車庫前)が廃止され、地下鉄・市バスへとバトンタッチした。

 

 

展示風景3

II 大阪市営バスのあゆみ

 

民間の大阪乗合自動車が大正13年7月から市内中心部の堺筋、四ツ橋筋、上町筋(南国線)においてバスの運行を開始した。これに対し昭和2年2月に市営バスも、市内周辺部の阿部野橋から平野4.8キロの営業を開始、次第に路線を延ばし、昭和4年には市内中心部の堺筋と上町筋で運行を始めた。
青色の車体の「青バス」(大阪乗合自動車)と銀色の車体の「銀バス」(大阪市営バス)の激しい競争が繰り広げられたが、昭和16年6月には大阪市が大阪乗合自動車を完全統合し、市営バスが一元化された。戦時中は燃料難から運行に苦労し、被災した車両も多かったが、戦後は進駐軍の払い下げ車両なども活用し、急速な復興を遂げた。

 

 

展示風景5

III 日本初の公営地下鉄

 

大正期には次世代の高速鉄道敷設の調査が始まり、昭和5年1月着工、難工事であったが昭和8年5月、梅田から心斎橋3.1キロが開通し日本初の市営地下鉄ととして営業を開始した。両端駅ともに未完成で交通機関としての役割を果たすには十分ではなかったが、昭和10年には梅田駅が完成し、続いて難波駅まで4.1キロの開通によってようやく南北幹線として活躍するようになった。さらに昭和13年天王寺まで延長、梅田から天王寺を13分30秒で結び3両に増結、大量輸送の真価を発揮することとなった。市電と同様、地下鉄の敷設は御堂筋の整備など都市計画に重要な役割を果たしたと言える。
戦時中中断していた工事も昭和25年には天王寺以南で建設工事を再開し、路線を延伸していった。万国博覧会開催直前の昭和45年3月千日前線桜川~谷町九が開業し、64.2キロの地下鉄路線網が完成、前年に廃止された市電からのバトンタッチが完了した。
平成2年3月、日本初のリニアモーターカーによる地下鉄、鶴見緑地線が開業した。これは「国際花と緑の博覧会」にあわせて建設された路線で、リニアモーターを採用することで車両を小型化し、路線のトンネル断面を縮小することで建設費を圧縮すること、走行性能の向上が可能となった。

 

展示風景4

IV トロリーバスの開業

 

昭和28年9月1日、大阪駅前から神崎橋5.7キロに沿道住民の要望を受け、市電延長の代用としてトロリーバスが登場した。市電廃止路線を引き継いで、昭和38年には総路線38.9キロに及んだが、道路事情が悪化する中、架線の制約で市電に続いて運行効率の低下を招き、昭和45年6月14日守口車庫前から杭全町の廃止をもって姿を消すこととなった。

 

 

V ニュートラム・OTS

 

昭和56年3月16日、大阪南港の足としてニュートラム「南港ポートタウン線」中ふ頭駅から住之江公園駅が開業した、新交通システム(AGT)であるニュートラムは、地下鉄とバスの中間の輸送力を持ち、高架の専用軌道をゴムタイヤで走行するため振動や騒音が軽減し、運行が自動で制御されている。平成9年12月18日に大阪港トランスポートシステム(OTS)経営の大阪港~コスモスクエア~中ふ頭が開業し交通局との相互乗り入れを開始した。その後平成17年7月1日、交通局に運営を移管された。

 

 

展示風景6

VI OsakaMetro・大阪シティバス

 

大阪市は行政改革の一環として、平成30年に大阪市交通局の事業を大阪市高速電気軌道(地下鉄・ニュートラム)と大阪シティーバス(市営バス)に引き継ぎ、大都市の公営交通として初めて完全民営化が実現した。効率的な事業経営や多様な事業展開による沿線地域活性化への貢献、迅速なサービス改善に向けて大きな一歩を踏み出した。

 

 


 

ブログ 布留川のほとりから

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