教祖百二十年祭特別展 「火のめぐみ」
一昔前、日々の暮らしの中で火は不可欠のものでした。暗くなるとランプや燭台に火を灯して明かりをとり、三度の食事は竈(かまど)で火を焚いてまかない(調理)をして暮らしました。そして、寒くなると炬燵(こたつ)や火鉢に火をくべて暖をとり、冷えた身体に温もりを与えようとしました。
世界各地から集まったこれらの道具には民族的な特色が出ていたり、火や熱のエネルギーをいかに有効に取り込もうかといった工夫が見受けられます。それぞれの道具に、火と共に暮らした人びとの思いが凝縮されています。また、火に関わる神話が物語るように、火の神に対する信仰は、人類が火を使用するようになったのと同時に発生したと考えられています。火の神に対する信仰や火祭りがさまざまな形で世界のいたるところに残っています。
このように、火は私たち人類の生活にとって、欠かすことのできない存在です。人間と火との関わりは、人間がその恵みを利用するだけでなく、私たちの暮らしの中で、重要な位置を占める精神的な要素の一つとなっています。
教祖120年祭を迎えるにあたり、本展が火水風の恵みを受けて私たちが生かされていることに思いを巡らす機会となれば、望外の喜びです。
◆会期:2006(平成18)年1月21日(土)~8月7日(月)
◆会場:3階企画展示室1・2、ほか
■ホール展示
『奈良大和路の火祭り』(季節展示)
「小正月のとんど」 2006(平成18)年1月22日(日) → 2月27日(月)
「山田町の虫送り」 2006(平成18)年5月24日(水) → 7月3日(月)
「東坊城ほうらんや」 2006(平成18)年7月16日(日) → 8月7日(月)
■関連イベント
ホール展示の作業をご覧いただけます。
とんどのホール展示作業
日時:2006(平成18)年1月22日(日) 午後1時から 終了しました。
ほうらんやのホール展示作業
日時:2006(平成18)年7月16日(日) 午後1時から 終了しました。
※ 雨天の場合は組み上げ作業をご覧いただけない場合もあります。予めご了承下さい。
■列品解説
月日:2006(平成18)年1月26日(木)、3月18日(土)、5月26日(金)、7月26日(水) いずれも午後1時30分から
場所:3階企画展示室
■シンポジウム「火と神話の世界」 環太平洋神話研究会共催
日時:2006(平成18)年3月18日(土) 午前10時から
会場:天理参考館 研修室、ほか 終了しました。
展示詳細
火・・・。人びとはそれぞれの胸の内に火を灯し続けています。誕生と共に赤ちゃんの心に小さな火が灯り、その火は、子どもの成長に併せて次第に大きく育ちます。穏やかな心でいると、蝋燭や油灯の炎のような明かりでやさしくまわりを照らします。そして喜びや怒りで心が激しく揺れたり、心揺さぶられる感動を受けたりすると、心の炎は一段と激しさを増すでしょう。やがて死を迎えると、その炎は静かに幕を閉じることとなります。人間の生きるという行為そのものが、あわせ鏡のように火の営みに通じてくるのではないでしょうか。
このことは、はるか昔、私たちの祖先が火を自分たちの暮らしに役立てて使いこなすことを知って以来、人が火と関わってきたことの証といえるのかもしれません。本展では、火のめぐみを受けて高度な文明を築き上げた人間社会の営みを、収蔵資料の中から見つめてみたいと思います。さまざまな明かり・温もり・炊事の道具が、古代より現代にいたるまで、火や熱の力を活用するために生み出されてきました。それらはそれぞれの時代や地域に応じた、火と関わる道具であることがわかっていただけるでしょう。またそれとは逆に、火は瞬くうちにこの世のあらゆるものを焼き尽くす、恐怖の存在でもありました。そして各地に残る火にまつわる伝承や神話のいくつかは、火のめぐみに感謝すると共に、火の力を畏れ敬う行事(火祭り)として今日に継承され、火への信仰という形でその姿を残しています。
このように、火は私たち人類の生活にとって、欠かすことのできない存在です。人間と火との関わりは、人間がそのめぐみを利用するだけのものではなく、私たちの暮らしの中で、重要な位置を占める精神的な要素の一つとなっていることにも意を汲みながら、本展をご覧いただければ幸いです。
併せて、教祖120年祭を迎える本年、私たちは火水風の恵みを受けて生かされていることにあらためて感謝し、本展が「火のめぐみ」を顧みる一助となれば、望外の喜びです。
出品リスト
火の神話と信仰
1. 木幣“イナウ” 北海道二風谷 北海道アイヌ 1996(平成8)年 高65.3cm 1点
2. 護符「竈神符」 中国 20世紀前半 縦35.0cm 1点
*3. 護符「張天師(雷令)符」 中国 20世紀前半 縦89.0cm 1点
4. 香炉“五宝炉” 台湾、屏東 20世紀前半 高42.7cm 1点
5. 竈“ククブ” パプアニューギニア イアットムル 20世紀中頃 高23.5cm 1点
むかしの火-考古美術の部-
*6. 火鑽臼 奈良県天理市布留遺跡三島(里中)地区 古墳時代後期(5~6世紀) 長14.8cm 1点
7. 舞鑽 パプアニューギニア、東セピック州ウェワク村 20世紀中頃 軸木長55.5cm 1点
8. 擦台と木片 ミクロネシア連邦、カロリン諸島チューク島 20世紀中頃 擦台長47.7cm 1点
9. 発火用具箱 日本 幅25.0cm 1 点
*10. 火打鎌 奈良県天理市布留遺跡杣ノ内(樋ノ下)地区 鎌倉~室町時代(13~14世紀) 長6.8cm 1点
*11. 携行用発火具 ネパール 20世紀中頃 火打金長13.2cm 1点
*12. 圧気発火具 マレーシア、ケランタン州 20世紀中頃 長15.0cm 1点
*13. 石囲い炉複製模型 奈良県天理市布留遺跡布留(堂垣内)地区 縄文時代後期(約5000年前) 一辺長52.0cm 1点
*14. 銅鐸鋳型復元模型 原品/兵庫県姫路市名古山遺跡 原品/弥生時代 高33.0cm 1点
15. 銅鐸 伝静岡県伊豆市堀切 弥生時代中期(前2~後1世紀頃) 高 28.4cm 1 点
*16. 鞴羽口 奈良県天理市布留遺跡三島(里中)地区 古墳時代後期(5~6世紀) 最大長8.5cm 6点
17. 鞴 ロシア、クラスノヤルスク地方 20世紀中頃 長62.1cm 1点
18. 鉄鉗 奈良県天理市布留遺跡杣ノ内(樋ノ下)地区 古墳時代後期(6世紀) 長31.6cm 1点
19. ガラス小玉鋳型 奈良県天理市布留遺跡杣ノ内(樋ノ下・ドウドウ)地区 古墳時代後期(5世紀) 最大長4.0cm 3点
*20. ガラス小玉 群馬県 古墳時代(4~6世紀) 最大径0.5cm 128点
21. 陶製刀子范 中国 戦国時代(前5~前3世紀) 長32.5cm 1点
22. 青銅環頭柄刀子 中国 漢時代(前2~後2世紀) 長27.8・22.9cm 2点
23. 陶製帯鉤范 中国 戦国時代(前5~前3世紀) 幅11.8cm 1点
24. 青銅琵琶形帯鉤 中国 戦国時代(前5~前3世紀) 長5.4~7.4cm 3点
25. 石製半両范 中国 前漢時代(前2世紀) 長38.7cm 1点
26. 半両 中国 前漢時代(前2世紀) 径2.4・2.3cm 2点
27. 青銅製五銖范 中国 漢時代(前1~後2世紀) 長23.4cm 1点
28. 五銖 中国 漢時代(前1~後2世紀) 径2.5・2.5cm 2点
29. 陶製大泉五十模 中国 新時代(1世紀) 残長15.2cm 1点
30. 大泉五十 中国 新時代(1世紀) 径2.8・2.8cm 2点
*31. 重ね焼きの道具 岐阜県内窯跡 安土桃山~江戸時代(16~17世紀) 径4.0~13.9cm 7点
*32. 溶着した陶器 岐阜県内窯跡 安土桃山~江戸時代(16~17世紀) 径13.0~15.1cm 6点
*33. 焼成不良の陶器 岐阜県内窯跡 安土桃山~江戸時代(16~17世紀) 径2.9~15.9cm 9点
*34. 塵が付いた陶器 岐阜県内窯跡 安土桃山~江戸時代(16~17世紀) 径5.4~20.9cm 4点
*35. 集石遺構 奈良県天理市布留遺跡豊井豊井(打破り)地区 縄文時代早期(約9000年前) 径113.0cm 1点
*36. 土師器竃 奈良県天理市布留遺跡守目堂(ツルクビ)地区 古墳時代後期(6世紀) 高38.3cm 1点
*37. 土師器甕 奈良県天理市布留遺跡豊井(宇久保)地区 古墳時代後~終末期(6~7世紀)径25.0cm 1点
*38. 土師器羽釜 奈良県天理市布留遺跡布留(西小路)地区 室町時代(14~15世紀) 径15.5cm 1点
*39. 土師器皿 奈良県天理市布留遺跡布留(西小路)地区 鎌倉~室町時代(13~14世紀) 径7.7~11.9cm 6点
40. 青銅竈 中国 後漢時代(1~2世紀) 長22.1cm 1点
41. 灰陶竈 中国 後漢時代(1~2世紀) 長30.1cm 1点
42. 白陶竈 中国 唐時代(7~8世紀) 高9.8cm 1点
43. 黄白釉女子座俑 中国 唐時代(7~8世紀) 高12.6cm 1点
*44. 青銅染杯染炉 中国 前漢時代(前2~前1世紀) 高11.7cm 1点
45. 青銅熨斗・灰陶獣形脚台 中国 後漢時代(1~2世紀) 熨斗長27.6cm・脚台高31.9cm 2点
46. 青銅鍍錫豆形灯 中国 戦国~前漢(前3~前1世紀) 高7.1cm 1点
*47. 青銅組合灯 中国 漢時代(前2~前1世紀) 高さ14.3cm 1点
*48. 青銅鳥文高脚灯 中国 前漢時代(前2~前1世紀) 高35.5cm 1点
*49. 青銅羊形轆轤灯 中国 後漢時代(1~2世紀) 高9.4cm 1点
50. 緑褐釉熊形灯 中国 後漢時代(1~2世紀) 高25.6cm 1点
*51. 青磁花弁飾灯 中国 南北朝時代(5~6世紀) 高17.0cm 1点
52. 刻字卜甲・卜骨 中国 殷時代(前13~前11世紀) 長5.1~11.1cm 6点
*53. ヘレニズムの土製ランプ オリエント 前4~前2世紀頃 長8.3~11.2cm 3点
*54. ローマの土製ランプ オリエント 1~3世紀頃 長8.1~12.0cm 6点
*55. 青銅製ランプ オリエント ローマ(1~2世紀頃)・ビザンティン(5~7世紀頃) 長14.1・13.6cm 2点
*56. エジプトのランプ オリエント 3~4世紀頃 長7.5~10.0cm 4点
*57. ビザンティンの土製ランプ オリエント 5~9世紀頃 長8.9~10.0cm 3点
*58. イスラムのランプ オリエント イスラム時代(7~15世紀) 最大高18.4cm 5点
くらしと火-生活文化の部-
59. 松明 奈良県桜井市大神神社 1959(昭和34)年 長83.0cm 1点
60. 松明 奈良県吉野郡金峯山寺 1954(昭和29)年 長83.5cm 1点
*61. 松明 奈良県天理市山田町 2004(平成16)年 長240.0cm 1点
62. 松明 ラオス 20世紀中頃 43.0cm 2点
63. 蝋燭 福島県 高24.4cm 1点
64. 蝋燭 福島県 高24.1cm 1点
65. 蝋燭商札 福島県 縦19.5cm 1点
*66. 蝋燭 中国 20世紀前半 長47.0cm 2点
*67. 蝋燭“蝋燭” 台湾 20世紀後半 長15.0cm 2点
*68. 蝋燭“蝋燭” 台湾 20世紀後半 長15.5cm 2点
*69. 蝋燭 ラオス 現代 長45.8cm 2点
70. 吊燭台 台湾 20世紀中頃 高160.0cm 2点
71. 手燭 日本 長24.0cm 1点
72. 手燭 日本 長18.0cm 1点
73. 掛燭台 日本 長24.7cm 1点
74. 提灯箱 奈良県天理市三島町 高27.0cm 1点
75. 弓張提灯 奈良県天理市三島町 高34.0cm 1点
76. 龕灯 日本 長37.0cm 1点
77. 燭台 日本 高65.0cm 1点
78. 燭台 日本 高76.5cm 1点
79. 燭台 日本 高30.0cm 1点
*80. 燭台“チョッテ” 朝鮮半島 20世紀前半 高42.0cm 1点
*81. 燭台“チョッテ” 朝鮮半島 20世紀前半 高43.0cm 1点
82. 龕灯“チョヂョクドゥン” 朝鮮半島 20世紀前半 長49.5cm 1点
83. 提灯“羊角燈” 中国、北京 20世紀前半 高25.0cm 2点
84. 燭台 中国 20世紀前半 高40.0cm 2点
85. 燭台“燭台” 台湾 20世紀中頃 高113.0cm 2点
*86. ラオスの結婚式(再現展示) ラオス、ビエンチャン 現代 1点
*87. 燭台 インド、タミールナドゥ州 20世紀中頃 高32.3cm 1点
*88. 燭台 ヨーロッパ 20世紀前半 高29.6cm 2点
89. 灯心箱 和歌山県那賀郡打田町 高10.0cm 1点
90. 吊灯台 日本 高34.0cm 1点
91. 秉燭 日本 高5.0cm 1点
92. 灯明皿 日本 高6.0cm 1点
93. ランプ 日本 明治~大正時代 高12.3cm 1点
94. ランプ 日本 明治~大正時代 高14.0cm 1点
95. ランプ 日本 明治~大正時代 高12.4cm 1点
96. 秉燭(トゥンヂャン) 朝鮮半島 20世紀前半 胴径6.2cm 1点
97. 提灯“灯籠” 中国 20世紀前半 長25.0cm 1点
98. 提灯“灯籠” 中国 20世紀前半 長20.0cm 1点
99. 灯心“灯芯” 中国 20世紀前半 長23.5cm 1点
100. 秉燭 中国、広東省 20世紀前半 高6.0cm 1点
101. 秉燭 台湾 20世紀前半 高7.0cm 1点
102. 双子灯明皿“ペセパン・グンプル” インドネシア、バリ島 バリ・アガ 20世紀後半 長16.5cm 1点
103. 鳥形吊灯台 インドネシア、ジャワ島 20世紀中頃 長11.5cm 1点
104. 灯明台 インド、タミールナドゥ州 20世紀中頃 高11.2cm 1点
*105. ランプ“ファーヌース” エジプト 20世紀後半 高19.0cm 1点
*106. ランプ“ファーヌース” エジプト 20世紀後半 高12.7cm 1点
107. ランプ 奈良県天理市布留町 高68.0cm 1点
108. ランプ 日本 明治時代 高75.0cm 1点
109. ランプ 日本 高49.5cm 1点
110. ランプ 日本 高26.4cm 1点
111. ランプ 日本 高24.0cm 1点
112. 灯台“トゥンギョン” 朝鮮半島 20世紀前半 高51.6cm 1点
113. 秉燭“トゥンヂャン” 朝鮮半島 20世紀前半 高7.6cm 1点
114. 秉燭“トゥンヂャン”の受具 朝鮮半島 20世紀前半 高46.8cm 1点
115. 龕灯“ロバカン” インドネシア、バリ島 バリ・アガ 20世紀後半 本体の高20.5cm 1点
116. 霊鳥形吊灯台 インドネシア、ジャワ島 20世紀中頃 高20.4cm 1点
*117. 杭形ランプ ネパール 20世紀中頃 高47.0cm 1点
*118. 杭形ランプ ネパール 20世紀中頃 高36.5cm 1点
*119. 鶏形ランプ ネパール、カトマンズ 20世紀中頃 高41.0cm 1点
120. 丸行灯 奈良県北葛城郡広陵町 高84.5cm 1点
121. 多枝形吊灯台 台湾、台南市 20世紀中頃 幅80.0cm 1点
122. 錦絵「東京名所之内 銀座通煉瓦造鉄道馬車往復図」 東京都 1882(明治15)年 横73.5cm 1点
123. 錦絵「東京名所之内 吉原の満花」 東京都 明治10年代 横24.7cm 1点
124. 大釜“ムラノカマ” 奈良県橿原市北越智町 昭和時代 高52.0cm 1点
125. 羽釜 奈良県天理市杣之内町 昭和時代 高27.0cm 1点
126. 羽釜“ソッ” 朝鮮半島 20世紀前半 幅41.9cm 1点
127. 蒸籠 インドネシア、バリ島 バリ・アガ 20世紀後半 胴径27.0cm 1点
128. 火箸“スピット” インドネシア、バリ島 バリ・アガ 20世紀後半 長66.8cm 1点
129. 団扇 インドネシア、バリ島 バリ・アガ 20世紀後半 長49.0cm 1点
130. 調理用編籠 カナダ、北西沿岸 トリンギット 20世紀中頃 高23.5cm 1点
131. 炬燵 奈良県天理市田部町 昭和時代 高22.5cm 1点
132. 炬燵 奈良県天理市三島町 昭和時代 高27.0cm 1点
133. 火鉢 奈良県天理市三島町 昭和時代 高19.5cm 1点
134. 火鉢“ファロ” 朝鮮半島 20世紀前半 高13.8cm 1点
135. 十能 朝鮮半島 20世紀前半 長35.7cm 1点
136. 火鉢 インド 20世紀中頃 高16.0cm 1点
*137. 炬燵布団 トルコ 20世紀中頃 136.0×140.0cm 1点
138. 水煙管“フッカ” トルコ 20世紀中頃 高46.0cm 1点
*は初公開、または初公開資料を含む