2013年新春展「古代日本の鏡」会期残りわずかになりました。
2013年02月19日 (火)
早いもので新春展「古代日本の鏡」は会期末まで残りわずかとなりました。寒い日にも熱心なお客様にご来館頂いており、ありがたく思います。
今回は3面の海獣葡萄鏡をご紹介します。この3面は文様がまったく同じで、特に2と3は中央の鈕(ちゅう:紐を通す孔が開いているところ)が錆びているかどうかで見分けるしか方法がないくらいです。このように文様がまったく同じ鏡同士を「同型鏡」と呼びます。
「同笵(どうはん)鏡」という言葉の方がおなじみかもしれませんので、「同笵鏡」と「同型鏡」の違いをおはなしします。ひとつの鋳型(笵)を何回も繰り返し使って作った鏡同士は、ひとつの同じ鋳型から作ったので「同笵鏡」と呼びます。一方「同型鏡」は、ある1面の鏡に土を押し当てるとまったく同じ文様の鋳型を作ることができます。何回も同じ作業を行えば、鋳型を何個も作ることができます。それぞれの鋳型で作った鏡同士は、文様はまったく同じですが鋳型(笵)は別々なので、「同笵鏡」とは呼ばず、「同型鏡」と呼びます。「同笵鏡」の鏡同士も「同型鏡」の鏡同士も、それぞれ文様はまったく同じですから、ある鏡同士が「同笵鏡」か「同型鏡」かを判別する時には、文様以外の部分、小さな傷やわずかな凹凸を観察しなければなりません。
では3面の海獣葡萄鏡を見てみましょう。
(1)注ぎ口
2の鏡は下の方が、3の鏡は右の方が文様が不鮮明です。これは鋳型のこの辺りに、溶けた銅の注ぎ口があったことを表します。1の鏡は注ぎ口の位置はよくわかりません。
(2)動物形の鈕の左脇
1はきれいな平面ですが2は少し凹凸があります。3は不自然に盛り上がっています。これは、3の鋳型はこの部分が欠けて穴になっていたために、鏡が逆に盛り上がってしまったことを表します。
(3)鈕の右にいる獣の尾房
1は房全体が箒(ほうき)のような毛の表現ですが、2は房の大半がつるりと滑らかで、短い毛が生えたようになっています。3は房の左半分が滑らかで、右半分に毛が生えたようになっています。これは元の鏡は1のように全体が毛の表現だったけれども、2と3では元の鏡からこの部分の型がうまくとれなかったのでしょう。
(4)小鳥の前の葡萄
1は葡萄一房が明瞭に仕上がっていますが、2は房の左半分に葡萄の粒がありません。3も葡萄の粒は少ししかありませんが、小鳥の頭の右上に大きめの2粒があります。これも2と3は鋳型のこの部分が欠けていて、3は2粒だけ新たに彫り加えたのでしょう。
考古美術室 F