新春会 開催中!!
2013年01月16日 (水)
新春展「古代日本の鏡」は、1月5日から始まりました。熱心にご見学下さっているお客様をお見かけすると、嬉しいと同時に身の引き締まる思いです。
この展覧会では、レプリカを含めて5面の三角縁神獣鏡を展示しています。今回はそのうちの1面をご紹介します。
中央の、紐を通す孔が開いているところ(鈕・ちゅう)のすぐ外側(内区)に、正座している神像と四つ脚の獣が交互に3体ずつ描かれ、その外側(外区)には象や魚などの獣が10体並んでいます。中国製か日本製か謎の多い三角縁神獣鏡のなかでも、日本製とされることが多い「ぼう(にんべんに方)製三角縁三神三獣鏡」です。
この鏡は立派な桐の箱に入っており、蓋の裏に箱書きがあります。
「備前国香登町丸山古墳 昭和十八年頃発見 同時発見他ノ鏡ハ東京博物館ノ有トナル」
備前国香登町丸山古墳とは、現在の岡山県備前市鶴山丸山古墳のことです。発掘調査報告書によるとこの古墳は、昭和11年に石室内で地元の人が多数の鏡を発見したので考古学者の梅原末治が駆けつけて発掘調査を行うとともに、地元の人から出土状況を聞き、掘り出されていた鏡を回収しましたが、すでに何面かの鏡は行方不明となっていました。この時点で鏡は17面あり、東京国立博物館の所蔵品となりました。現在東京国立博物館で常設展示されています。調査ののち梅原末治は行方不明の鏡を追跡し、表の31面の鏡を報告しました。困ったことに今回の「ぼう製三角縁三神三獣鏡」は含まれていません。
大半の鏡は、上の図のように石室に置かれた石棺の長辺に沿って、石室の床に堆積した粘土に少し埋まって立った状態で出土しました。東京国立博物館所蔵の鏡を見ると、部分的に色が違っていたり傷みが激しかったりするので、そこが粘土に埋まっていたことが分かります(傷みが進行しないように処置が行われてあります)。
東京国立博物館所蔵の鏡の画像は http://webarchives.tnm.jp/imgsearch/ で「鶴山丸山古墳」で検索すると、見ることができます。
改めて天理参考館の三角縁神獣鏡を見てみましょう。部分的に色が違ったり傷みが激しいという状態ではなく、東京国立博物館所蔵品のような粘土に埋まっていた痕跡は、見て取れません。
このような検討の結果この三角縁神獣鏡は、箱書きはほぼ事実に即しているけれども、残念ながら実際に鶴山丸山古墳から出土した可能性は低い…ということになります。そこで新春展では「伝鶴山丸山古墳出土」として展示しています。
考古美術室 F