路線拡大を目指せ!近鉄の熱い思い-トーク・サンコーカンから-
2023年04月25日 (火)
開催中の第92回企画展「近鉄電車展Ⅱ-大和ゆかりの路線100年-」関連イベントとして第302回トーク・サンコーカンを実施いたしました。
近鉄(正式名称:近畿日本鉄道株式会社)は、日本最大の鉄道網を有する私鉄で、路線は大阪府、奈良県、京都府、三重県、愛知県の2府3県にも及びます。なぜこのように広範囲に鉄道網を張り巡らせることができたのか?それは自社線の延伸に加え、精力的に既存の路線の買収を進めたからです。
王寺駅と新王寺駅、田原本駅と西田原本駅が離れているのに不便を感じる方も多いのではないでしょうか。これは、元々異なる鉄道の路線だったからです。
新王寺駅と西田原本駅の間は、大正7年に営業を開始した大和鉄道が運行していました。大阪電気軌道(近鉄の前身)は大正12年の自社線である橿原線開業に関連して大和鉄道を傘下に収めることになりますが、そこには大きな目的がありました。大和鉄道が大正11年に取得していた桜井・名張間の鉄道敷設免許を手に入れるということです。これを足がかりにさらに東進して伊勢まで路線を延ばし、伊勢神宮の参拝旅客を手中に収めることができたのです。
戦時中は一般的な旅行が制限され、戦災を被る路線もあって鉄道会社は苦しい経営を強いられましたが、近鉄は国が参詣を勧めた伊勢神宮や橿原神宮、皇陵などのスポットを多く沿線に有していたため、比較的ダメージは少なかったのです。
新規路線開業やM&Aがダイナミックに行われていた時期の、生き残りをかけた私鉄間の真剣勝負には心が躍ります。珍しい「ナンバーワン切符」も画面で紹介され、参加者も身を乗り出して聞いていました。
企画展図録のほかに講演当日配布したレジメも受付にて頒布しております(在庫限り)。ご希望の方はご来館の際に受付までお問い合わせください。
今回は担当学芸員の講演会でしたが、5月20日(土)午後1時30分から開催する記念講演会では、大阪商業大学教授の谷内正往先生に、また違った観点からお話しいただきます。奮ってご参加ください!
【第92回企画展ブログ8】
日本民俗室 H